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彼氏 卒業編 30

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イラスト / シロマイナスクロ様


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2LDKのマンションの2階の隅、その部屋に向かって進んでいく神楽の手には、荷物が入ったキャリーバックが握られてある。そしてその後ろを歩いているのは沖田だ。前を歩く神楽の背中はわくわくとして楽しみでたまらないとでもいうような表情をしている。
すると、神楽はうしろを歩く沖田の方をふりかえると、満面の笑みをむけながら口をひらいた。
「早くするネ!」
そして言ったあと、沖田の言葉を待たずにその顔を前にむけ、やっぱり嬉しそうに前に進みだした。そしてとうとう部屋の前につくと、手に握りしめていた鍵を鍵穴へとさした。少し緊張をしているのか、神楽は一度ふーっと息をはいた。そして大きくはいた息をすいこむと、ガチャとする音とともにドアをあけた。
「すっごいアル……」
目の前に飛び込んできたのは、真っ白を強調させた2LDKの間取りの部屋。既に家具が設置されており、今この場から新しい生活がスタートできるようなスタイルになっていた。部屋の随所には緑がはえるようにと観葉植物が置かれ、家具はモダンチックなものがそろってある。二人でもゆっくりと座れるソファには赤と白のクッションがある。

神楽の後から部屋の中に入ってきた沖田も、思わず目の前の光景に驚いたようだった。
「ねえ、沖田こっちアルっ」
ふかふかのソファに座って手招きしている神楽に呼び寄せられた沖田は、神楽の隣へと腰を下ろした。
ソファの前にはテーブルがあって、その前にはテレビがある。
「どうアルカ?」
沖田の表情を見ればどんな答えが返ってくるのか分かっているけれど、それを聞きたいとばかりに神楽は沖田の肩に頭を寄せ見上げた。
「いいんじゃねえですかィ?」
沖田の言葉に満足した神楽は嬉しそうに口を開く。
「ふふっ、私もそう思うアル」

沖田と神楽がこの部屋に決めたのは、ほんの2週間前の事。二人で色々な物件を見てまわったけれど、良い部屋はいくつもあって、なかなか決められなかった。出来るだけ沖田は神楽の意見を尊重しようとしていたけれど、二人の時間があわない事もあって、なかなか進まなかった事もあった。
そんな時に舞い込んだのが、この部屋の物件情報だった。カップルをターゲットとしたキャンペーン中でしかも家具付き。今即決しなければ、こんな好条件の物件なんてすぐに決まってしまうと思った神楽は、即決でこの部屋を決めてしまったのだった。

敷金は高めだったけれど、家具がついていた事もあって、上手く二人の荷物を処分しお金をゲット。そして今二人はこうしてこの部屋にいる。
「ほんと……めっさ幸運だったアル」
なかなか決まらなかった物件も、この物件に出会うがためだと思ってならない。それほどにこの部屋は二人の理想にピッタリであり、さらにそれを超えていた。
沖田は嬉しそうな神楽の頭をくしゃりとさせると腰をあげた。

ここに来る途中で買ったドリンクを真新しい冷蔵庫の中にと入れると、その中から二本だけ手にとって、神楽のもとにとかえってきた。
「ほれ」
沖田の手からもらったジュースを受け取ると一口だけ飲んだ神楽は口を開いた。
「今だったら、何だって美味しい気がするネ」
神楽のセリフがおかしかったのか、沖田は口元に笑みを浮かべた。
「他の部屋も見てみるアル」
立ち上がると、テーブルの上にジュースを置き、あと二部屋ある中のひとつ、寝室にと向かった。
ドアを開くとそこには、カップルにはピッタリのダブルベットの姿が目に飛び込んできた。二人で寝られる事を想定したベットは見ただけでふかふかとしており、また十分に大きかった。それを見た神楽は思わず広いベットにとダイブした。
「ふっかふかアルっ」
弾力は十分、広さも十分、これならきっと寝相が悪い日だって大丈夫な気がするほど今まで使用していた二人のベットよりもずっと大きく広かった。
神楽はお前も隣に来いとばかりに、ベットを叩く。それに呼び寄せられる様に沖田は神楽の隣にと寝た。
確かに神楽がはしゃぐ気持ちも分かるほど、ベットは柔らかく居心地がいい。今まで狭いベットであっても二人でより添っていられたので、不満は一切ない。けれど広いベットが居心地がいいのも本当だった。
「ねえ、今日から、二人でここで寝るアルカ?」
「さてねえ、どうしやすかィ」
沖田の言葉に、神楽は頬を膨らませる。
「そんな事言うなら、お前はソファでもどこでも寝るアル、私は絶対このベットに寝るネ」
そういうと、沖田に背を向けてしまった。
神楽の言葉も行動も、想像していたまさにその通りだった事が面白くて、背中で笑うそぶりを見せた。

そんな神楽をそのままに、沖田はベッドから起き上がる。
「ほら、まだ荷物の仕分け終わってねえだろィ」
沖田の言葉に神楽はハッとしたように身を起こした。
「そうネ!はやく片付けるアル」
部屋にはもうすでに家具があって片付けるものといえば少ない荷物くらいで、たいした事はない。神楽は自分好みのインテリアにせいを出し始めた。
「そういや、近所の挨拶はどうするんだ」
沖田の話に気付いたように神楽が手を止めた。入口の所にある紙袋から菓子折りを一つ取り出した。
「これで挨拶に行く予定アル」
菓子折りは常識のあるミツバから用意されたものだった。近所付き合いは一番最初の印象が大切だ、だから挨拶と一緒に菓子折りを持って行けとミツバからのことづけられた。もしこれがまた子なら菓子折りの中身がいまいち信用できないが、ミツバとお妙なら信用度もたかい。

荷物もあらかた片付いてはいるし、忘れないうちに行ったほうがいいだろうと思った神楽は言葉と同時に行動に移した。
「先に行ったほうがいいアルナ」
そういうと、神楽は靴をはきはじめた。するとそこに沖田の声がかかった。
「あいさつなら、俺も一緒にいきまさァ」
近所となれば、これから顔をあわす必要もあるだろう。
「でも、隣の人は、来月には引っ越すって不動産屋が言ってたアル」
「だとしてもだろィ、ほら、行くぜ」
神楽の隣で靴を履き終わった沖田は、ドアをあけた。
「来月、引っ越しちゃうなら、また子と高杉が越してこればいいアル」
部屋の物件をみていた時、また子は、本当に羨ましそうにしていた表情をさせていた。好きな人と一緒に居たいと思う気持ちは、誰だって同じはず、また相手はあの高杉だ。普段から愛想を振舞わない男だから尚更一緒にいたい気持ちは大きいはず。
けれど沖田はと言えば、あの高杉が隣にこしてくるとなれば、たびたび顔を合わす事も想定されるだろう。そう思うと、冷ややかな表情をさせた。
「そんな事、ごめんこうむりまさァ」
「意地悪アルナ、お前」
高杉と犬猿の仲である沖田の気持ちも分かるけれど、と思いながら神楽はため息をついた。

二人がそんな会話をしながら隣の部屋の前の扉にたつと、沖田がチャイムを鳴らした。
すると、しばらくして、ガチャっと音がなった。
「――え」
それはどちらが言ったのか分からないほどに、ほぼ同時に口から発せられた。
沖田の目の前には、沙良がいた。
予想外の出来事に、神楽は言葉が出なかった。驚いた表情をしたのは沙良の方も同じで、けれど目の前の沖田の姿が嬉しかったのか、すぐに笑顔になった。
「沖田先輩、え、どうしたんですか?」
目の前の状況が理解できないのはどちらも一緒だけれど、神楽と沙良の表情はあきらかに対照的だった。
けれど、神楽の手にもってある、紙袋を見た沙良は予想がついたように、口をひらいた。
「もしかして、隣に誰かこしてくるって……沖田先輩なんですか?」
沙良は、沖田からの返答がそうであれば良いと言うように、表情を明るくさせた。

「え、ああ……お前こそどうして」
そう聞いた沖田の隣にいる神楽には、嫌な予感とそれが的中してしまうような気がした。
「あ、ここ私の家ですよ、友達とシェアしてるんです」
沙良の瞳は、さっきから沖田しか見てない。
「お隣さんなんて、偶然ですね」
本当に、これが偶然であるなら運命とはなんて皮肉なものなんだろうと思った。
隣で、言葉を飲み込んでいる神楽を見た沖田は、その手の中から菓子折りが入っている紙袋を手にとり、沙良へと渡した。
「ああ……、これ、隣なんで、まあよろしくでさァ」
「わあ、ありがとうございます、後で友達にも声かけときますね」
「じゃあ」
沖田と沙良が会話している間、その隣で何を話していいのか分からずに、また状況にもついていけない神楽は、ただただ沖田の服の袖をぎゅっとにぎりしめていた。


・・To Be Continued・・・・・


Category: 彼氏 卒業編
Published on: Mon,  21 2019 22:58
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