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名前を呼ばせて act 4

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「神楽ちゃん、この水着可愛いわよ。どうかしら?」
明日を旅行に控えた日。夏本番のショップの中には、ここぞとばかりに騒ぐ女の子の姿。その中に混じる様にして、お妙、ミツバ、また子、神楽の姿が見えた。お妙は神楽に次々へと水着を合わし、これでもない、あれでもないと悩んでいた。際どいラインのビキニ…。大人しめの可愛らしい水着…。自分の水着をほったらかし、麗に負けさせてたまるもんですかと瞳をキラキラとさせている。その迫力は、当の本人の神楽をドン引きさせていた。

「姉御~。こんなの着れないアル~。」
「何言ってるのよ神楽ちゃん、オシャレには我慢が必要なのよ。これを着て沖田さんを悩殺しちゃいなさい。」
 お妙が神楽に試着してくる様に渡したのは真っ赤な際どいビキニだった。

「こ、こんなビキニ着れる程、私胸ないアル…。」
悲しげに、そして情けなくなる様な表情で神楽が言った。
「そうかしら。神楽ちゃん胸のサイズは微妙だけど形は良いと前から思ってたのよね。」
「ななな何するアル、姉御!」
「ほら、やっぱり!これは強調すべき胸よ!」
神楽の胸をわしわしと掴みながら、ビキニに着替える様にお妙が言っていると、神楽の後ろから声がした。
「でも、神楽ちゃんには、こんな風なのが似合うんじゃないかしら…。」

そう言ったミツバの手には、神楽の白い肌によく合う空色で、上下に分かれているスカート付き水着があった。神楽の目は輝き、こっちの方がいいアル!と飛びついた。ちょっとお妙は不服そうに口を尖らした。けれどその水着が神楽に似合っているのも事実であって、仕方なく同意した…。

 
お妙達がやっと自分の水着をと選んでいると、カーテンの隅っこから、ちょこんと神楽は顔を見せた。
「ね、ねェ…。こんなんで、大丈夫アルカ?」
試着室のカーテンの隙間から、声をかける神楽に、三人は、どれどれと近づき、カーテンの向こう側に首をやると、一気に表情に花を咲かせた。
「神楽ちゃん、可愛いッス!それにするっスよ!」
また子は跳ねながら興奮し、目を輝かせた。

「可愛いじゃない。確かに神楽ちゃんにはそっちの水着の方が似合ってるわ。」
 お妙が柔らかく言うと、ミツバも頷いた。
じゃぁ、と神楽もその気になった様で、四人揃ってショップを出た後、まるで作戦会議だと言うように、今度はファーストフード店に入り、雑談を始めた。
「いい?神楽ちゃん。負けちゃ駄目よ。」

「そうッスよ。確かに麗ちゃんはスタイルも良いし、顔も美人だし…。」
言った側から神楽の顔が曇って言ったので、お妙はまた子の肘を小突くと、慌ててまた子が切り替えた。
「でも、神楽ちゃんの方が可愛いッスよ~。だってあの沖田さんが、あんな風な表情見せたの、ウチら見たことないっスもん。ね?」

「それは本当よ。あの沖田さんが、神楽ちゃんの事が好きで好きで仕方ないって見てればよく分かるもの。」
 お妙の言葉に、神楽は本当?と見上げた。
「神楽ちゃん。本当よ。総ちゃんがあんなに優しいくなれるのは、きっと神楽ちゃんだけだと思うわ。神楽ちゃんと会ってから、総ちゃん変わったのよ。自信を持って。」
「ミツバ姉ェ~。」
神楽の頭をミツバはよしよしと撫でてやった。とは言ったものの、麗は中々手ごわい相手だとお妙達は正直思っていた。 
 
沖田の方は、何も心配していない。けれど麗の方は当日も神楽にちょっかいを出してくるだろう。今回の神楽は、いつもの強気の神楽ではいられないと言う事は先日の件で十分確認できている。だからこそ、守ってやりたいと言うか、助けてあげたいと言うか…。神楽の弱さの部分が目立つのは、何度も確認するが、それだけ沖田の事が好きなんだろうと言う事。とはいえ、いつも神楽がこんなに弱いかといえば、そうでもない。学校での神楽は、これまでの神楽同様、気の強い神楽そのものだった。勿論、沖田が神楽の前で麗の話を匂わしたりする事は無い。そう考えると、麗と言う人間は、神楽にとって、今唯一脅威の存在であると、お妙達は考えていた。

「じゃ、神楽ちゃん、今日は早めに寝て、明日寝坊しちゃ駄目よ。」
 ミツバはふわりと微笑んだ。
「私の言った通り、沖田さんに朝向かえに来てもらえばいいじゃないっスか。」
「それは嫌アル。」
 神楽はぷぅと頬を膨らませた。前に一度、そう言って皆と待ち合わせする際、遅刻魔の神楽の為に、沖田は迎えにいったのだが、案の定神楽は起きていなく、寝起きの格好、および顔を、バッチシ沖田に見られてしまったのだった。
もうあんな思いは嫌だと、それ以来神楽は沖田の迎えを断っている。しかし少々不安はある。何故か神楽は目覚ましを止めて、いわゆる二度寝をしてしまう癖があるのだ。しかし何が何でも明日は遅刻する訳には行かない。神楽の家とは反対方向のお妙達がいっそ迎えに行こうかと言ってくれたが、何だか情けなくなるので、自分ひとりで頑張ってみると、その場を分かれたのだった…。

「とは言ったものの…。やっぱり不安アル…。」
 まだ半渇きの頭をタオルでゴシゴシと拭きながら携帯を神楽は握り締めた。明日は電車で行く予定だ。時間に遅れれば、自分だけ電車を一本乗り過ごす羽目になってしまう。おそらくは神楽が遅れた時点で、皆同時で電車を遅らせる事になってしまうだろうが、神楽は其処まで考えなかった。これが仲間内だけの旅行ならば神楽も、本当は深く考えなければならないだろうが、考えなかっただろう。ただ今回は麗が一緒だ。絶対に遅れる訳には行かない。
 やっぱり沖田に迎えを頼むアルカ…。
考えたが、それでも神楽が決断をしなかったのは、よほどその時の自分が悲惨だったのだろう。しかし実の所沖田は、普段見られない神楽、そしてある意味、自分だけしか知らない神楽に触れられた、と喜んでいたのは近藤達だけが知っている。
そんな事をもやもやと考えていると、持っていた携帯が着信音と共にブーと振動した。あわわと一度手から滑り落ち、もう一度掴んだ所であっと声を出した。
「な、何アルカ…。」
ばかっ!そうじゃないアル。思ってみたが時既に遅し、言葉はもう出た後だ。しかし沖田は、これがいつもの神楽なんだと全く気にしない風だった。
「いや、何してるかと思ってよ。今日は一緒に帰れなかったし…。」
「あっ…。ごめんアル。」
「無事に買い物は済ませたかよ。」
「勿論ネ。ちゃんと買ったアル。服も買ったし、シャンプーも、水着も…。」
「――そりゃ、どんな水着だ。」
「どんなって…。普通の水着アル。」
「普通ってどんなだ。言ってみろィ。」
「えェ?今?いいい嫌アル。」
「ほぅ――。オメーは俺に言えれねェ様な水着を着るつもりか?」
「そうじゃなくて…。あァ、もう、別にいいアル。そんな事。」
コレは、ちょっとやきもちも入ってるんだろうと言う嬉しさ反面、買った後、家でもう一度試着した時に赤面したのを思い出し神楽は不自然に話しを切り替えそうとした。その時、神楽の部屋に、意図も簡単に銀八が入ってきた。沖田との電話だと知っているのか知らないのか、遠慮はなしに…。むしろ此処は邪魔しに来たと言ってもいいかもしれない。

「オイ。神楽、あんな水着を着ていくなんざ、お父さん許しません!」
鼻息荒く、銀八はベットの上で座る神楽を仁王立ちで見下ろした。
「なななな!銀ちゃん、何言ってるアルカ!いいから出ていくアル!」
「何が出て行くアルだ。あんな格好で海に出てきゃきゃっと言ってたらオメー、男達の絶好のカモだよ?ンな事俺が許すはずねーだろう?」
神楽は目を吊り上げた。しかし銀八は全く容赦しない。
「お前も言ってやれ。あんな格好で海に出ていいと思ってんのかってよォ!」
明らかに沖田への言葉だった。神楽はぐぐっと銀八を押したかと思えば、そのまま尻に綺麗な蹴りを入れ、音を鳴らしドアを閉めた。思わず額を拭いながら現在も通話中になっているその携帯画面を見つめながら恐る恐る耳につけた。

「お、沖田…?。」
「――フーン。で?どんな水着だって?神楽さんよォ。」
 神楽はヒクリと喉を鳴らした。
「べ、別に今時ふつーの…。」
「普通の?なんだって?」
 明らかに沖田の声はトーンダウンしている。
「そ、それは着いた時のお楽しみにしていて欲しいアル。」
「俺が楽しみにしてると思うか?」
 そんな事を言ったって、神楽は口を閉ざした。しばらく沈黙が続いたが、沖田が大げさにため息をつく事で裂かれた。

「水着の事はともかく、明日オメー起きれんのか?」
「起きれ…。分かんないアル…。」
「やっぱ俺が迎えに行くか?」
「それは…。嫌アル。」
携帯の向こう側、長いため息の音が神楽の耳に響いた。神楽はベットに横たわり、ゆっくりと言葉を切り出した。
「朝、電話かけてヨ。沖田の電話なら気付くと思うアル…。」
 目覚ましの音では起きられない自分も、沖田専用着信音なら、起きられる気がする…。本当にそう思った。着信音がなるたび、胸が躍って、心があったかくなる、この音ならと。
「そんなんで…。本当に大丈夫かァ?」
「きっと大丈夫ヨ。だって沖田の音だもの。」
急に静かになった沖田。きっと向こう側で照れてるに違いない…。
「ね、沖田。」
「あ?」
「眠れないアル…。」
「――俺にどうしろと。添い寝でもしに来いってーのか?」
憎たらしいトーンの声が聞こえた。神楽はふっと笑うと、枕に頭を寄せた。
「私の事、私の何処が好きがお前が話してくれたら、私きっと眠れるネ。」
沖田は絶句した。思わぬ台詞が神楽から飛び出してきたが、おそらく神楽の本音だろうと沖田は思った。不安にさせる様な事はしていない。けれど理屈じゃないんだと言う事も、ちゃんと沖田には分かっていた。
「――よく食う所…?」
「何で疑問系アルカ。」
「いやいや、待て、後はだな…。」
そうは言ってみるものの、思うように言葉が出てこない。
大食いな所も、ツンデレなんだが、たまに出るデレが破壊的に可愛らしい所も、強がっては居るが、実は泣き虫な所も、友達を大事にする所も、キスをする時、まだ震える程恥ずかしがる所も…。全部が好きなのだ。溺れる程に…。
言葉が出てこない所為で神楽が傷つく羽目にならないようにと思う沖田だが、好きすぎて言葉にならない。けれど間違ってもそんな台詞は言えるはずもなく…。

「じゃ、もういいアル。」
この言葉に沖田は焦った。
「違げェ。そうじゃなくてだな…。ただ…。」
「ただ…?」
「上手く言葉に出来ねー。」
「――それは…。それ位私の事が好きって事アルカ?」
沖田は、自分の周りに誰も居なくて良かった。そう素で思っていた。
「判断はオメーに委ねてやらァ。」
くすくすと笑う神楽の声を聞いた沖田は、どうやらと、胸を撫で下ろした。他愛もない話を少々した後、神楽が眠いと言い出したので、朝電話をかけると切った。
切った後、まもなく神楽の寝息が聞こえて来た。反対の沖田はといえば、冷や汗の連続で、もう一度風呂へと入ろうと長い長い息をついたのだった。



・・・・To Be Continued・・・・・
Category: ★名前をヨバセテ
Published on: Sun,  04 2010 10:51
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